5. 紫野

 

 

  千花「先輩!、足速いですよ!」

初秋、帰り道を悟と共に歩いてゆく千花。

悟「おまえが遅いだけだ」

もう!
偉そうに!

「まーそういうところ嫌いじゃないですけど」

小走りで悟を追い掛ける彼女。


靖子「おっすぅ!ふたりとも仲良さそうじゃーん?」

後ろからクラスメートの靖子がふたりに声を掛ける。

結衣「あ、千花(嬉しそうに)。可愛くなったー」

靖子「ん?」結衣を見る。


パンッと軽く手を叩く結衣。

「木原先輩お手製の髪飾り!」


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木陰で休む悟と千花。

「器用ですもんねー。ほんっときれい」
何度も見る千花。

悟は誰でも作れる、と言った。


かっこつけ!

千花はそう言って立ち上がった。


千花は悟を見た。

「(この人って、、大樹みたい
何かこう・・・)」

初秋なのに、夏の香りがする。


悟が夏の象徴のような、大樹のような雰囲気を出しているからだ。


薄紫の野原をふたりで歩き、、
千花は悟に訊いた。

「あのー、木原先輩は『夏!』って感じなんですが、
私って四季で言うといつ、、かなぁ えと」

悟は後ろを振り返り、(やはり足が速い)千花を見た。

悟「春、、かな」

千花「春?」
声を大きくする彼女。

「かわいいから」

すげなく言って、背を向ける悟。

・・・

悟は乾燥剤(しかも強力)のように乾いている。


千花「あのね、先輩『夏の樹』でわ、わた、私が『春の花』
えーと昔のティーンズ向け小説で読んだ単語、、なんです」

千花「お、お揃いでいいですね
なんかいい!」
頬を染める彼女。


「ん。行くぞ」

丸っきし興味が無い感じでズンズン先に進む悟。


・・・
「賢木」

悟が呼んだ。

悟「秋と冬ないな」



驚く千花。


秋は、、春とセットですから。えーと、私が。

冬はー、荘厳?厳冬?何か凛々しい?感じがするから先輩!


悟「しゃべりすぎだ」

冷たく言い放つ悟。


「(秋と冬ないな言ったくせに・・・
こわい・・・)」


程なくして、家に着く千花。

「それじゃあまた!」
満面の笑みで手を振る。


もじもじもじもじもじ

もじもじもじもじ


悟は思いっきし挙動不審になった。

・・・
「・・・(汗)」


千花「(先輩・・・したいのね。お別れのキス)」



コマンド

流す
→嫌いなのか。もういい。と言って避ける
(すげー面倒臭い)

叶えてあげる
→ん。もういい、と言ってすげなく帰る

直球で聞いちゃう
→何を言っている、と言って呆れて帰る
(すげー恥かいた気分になる)

おあずけです!と言う
→何だと?と言ってビンタ



千花「(どのコマンドにしようか・・・)」

うっすら笑えてくる彼女。


長い沈黙。

「してくれないの」
偉そうに悟が言う。


「こ、コマンドが分かりません!」
えーと

・・・


えいっ!

千花は悟の作ったキレイな髪飾りを投げた。

キャッチする悟。


「これが?」
悟が言う。


「それがキスです!」

だからぁ

それ、返して。
「投げて!」

千花が言った。


「やだ」
ニヤリと笑って、背を向け、去って行く悟。


あー!
急いで彼を追う千花。


彼に追いつき、「返して」と言った瞬間に

その髪飾りは落ちた。


(了)

 

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