16. 森林と清水

 

 

  新しいものに常にアンテナを張っている悠悟。

新しいものにも古いものにも興味を持たない彩織。

ふたりは赤ちゃんから相当後(ひぃひぃじいちゃんばあちゃん)までの付き合いである。


これはまだふたりが高校生だった頃のお話・・・。


悠悟は何故かモテた。

落ち着いているところが良かったのだろうと思われる。

実際はかなりの野心家で皆を見下しているようなところがあったのだが・・・


彩織がかなり危なっかしくていつもハラハラさせられるので、そっとマークしていた。
(過保護な親の気持ち)


ふたりはいつも一緒に帰り、森林にいつも寄っていた。

悠悟は超能力者なのだが、今使わずに貯めておこう。と、
この頃は力を一切使わずに森のパワーなどを吸い取って
ひたすら「力」を貯めて(溜めて)いた。
(あやしい・・・)

悠悟「森と清水はいいらしい」

何が?
彩織は訳が分からなかったが、まぁいいや。と森林浴を楽しんでいた。
(マイペース)


ねぇ悠悟。

「ロマンチックな力が働きそうよ。
トリとか。リスとか。
そうね。蝶々とか。

可愛い夫婦、、つがいっていうのかしら?
ふふふーん♪」

テクテクと歩いて色々と探している。




「何処にもいないわね・・・」


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そっ、そういえば

・・・

・・・

ふたりの間に沈黙が。
いつものことである。

「そういえば」と言って彩織が言葉を止めるのだ。

毎回毎回・・・。

サクサクッ
サクサクッ

土を踏む音が響く。


悠悟は彩織の言いたいことが分かっていた。

『悠悟ってモテるよねっ』とか

『彼女いたんでしょ!』とか

『このどすけべ!』とか


面倒臭いなー、と思うのだが・・・
きっと無視すれば徹底的に彩織は避けるだろう。悠悟のことを。

そうなれば、彩織をマーク出来なくなる。

彩織が悪い虫にひっかかれば、彩織の母親が「悠悟君はちゃんと見てなかったの?」
と言うかもしれない。(過保護なのだ・・・)


ザーッ

キレイな滝が見えた。

わぁ・・・
と彩織。

悠悟も驚いている。

その森は物凄く広いので、奥まで行ったことが無かったのだ。


心が洗われるぅっ!

満面の笑みの彩織。

七色のような空気。

清浄された空間にしばしたたずむふたり。


・・・

突如しゃがみ込み、顔を両手で覆う彩織。

横では悠悟が自然のパワーをぶお~っと吸い取っている。


バッと顔を上げた彩織が言った。

「あなたなんて大嫌い!」

少し涙声。


「・・・?」
驚く悠悟。


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彩織はそれから二年ほど悠悟を避けた。


もうすぐ受験、という時。彩織が悠悟に「ど、何処の大学、志望なのよ」と聞いた。

悠悟は逆に彩織の志望大学を聞いた。


ふたりはベンチに座り、
「もう志望大学決まってて後は受験するだけ。って頃なのにね」
・・・的なことを語った。


長い沈黙。


彩織「あ、あなたに嫌われてると思ったのよ!」

『あなたなんて大嫌い!』

根拠たち
1、何となく
2、歩調を合わせて歩いてくれない
3、話さない


ふむ、、と悠悟。

1、→答えようがない
2、→そうだったのか
3、→話すのが苦手なんです


・・・

「もっとさ、」・・・コミュニケーション取りなさいよ、と言いたい彩織。

実際は『一緒に帰るという行為』をしている時点で悠悟にとっては
かなりのコミュニケーションなのだが・・・


受験勉強で寝不足の彩織は眠くなり、うつらうつらし出した。

悠悟はそっと彩織を倒してベンチで寝かせた。


ひゅうぅっ

寒い冬の風。


赤い鼻をした彩織。
寒さでそうなったのだろう。

彩織を起こした。

うえっ、、と起きる彩織。

髪を整えてから、、


「かえらにゃか、、帰らなきゃね、、むにゃ」

と寝惚けて言った。



ふたりは同じ大学に進学した。

悠悟の進学する大学の方が難関で、彩織がかなり苦労したのだが・・・。


あの日の森林内。

滝の前。

清浄された空間で、秘めていた想いが出てしまった。
>あなたなんて大嫌い

後にも先にも、、

ふたりがロマンスを奏でたことはこれが最初で最後であった・・・。汗


『ロマンチックな力が働きそうよ』


計らずも、、動物や昆虫ではなく、
人間である悠悟と彩織に『ロマンチックな力』が働いた、、と言える。


ふたりの想いはこれで高いレベルに到達してしまった。

つまりロマンは終了してしまったのであった。
それはそれなのであるが・・・。

 

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