12. 真織

 

 

  新しい情報を常にゲット。次から次へと人類の進化・発展を追う「悠悟」と、

新しいものはすぐに古くなるし、、どっちでもいい。の「彩織」。


出来たわよ!

「古いも新しいも関係ない、発明料理」を作る彩織。


今回は『お餅を乗せた生鮭のチーズ焼き』である。


こりゃ
「旨そうだね」

本当は悠悟の方が料理が上手いのだが、彩織の発明料理が面白くて彩織のを食べている。


お餅とチーズの組み合わせ。
以前テキトーにお餅の上にとろけるチーズを乗せてレンジでチンしたら悠悟が「お、旨い!」と言ったのを思い出し、
この組み合わせを良く作る彩織。


カレーの中にチーズを大量に入れてお餅を入れたこともある。
(そして唐辛子も入れた)


悠悟はドキドキしながら食べるのだが、彩織が「美味しいでしょ?」とウシシシと意地悪そうな顔をするので

旨いよ
と言う以外なかった。


もぐ

今回の食事。

「おいひ」
もぐもぐっ

どうやら成功のようだ。


「あったりまえでしょ!」

腰に両手を当てて偉そうに言う彩織。


真織『お義母さん、スーラータンメン(酸味の効いたラーメン)作ったのですが、
いかがですか?』

お義母さん

お義母さん
・・・

彩織の表情が暗いことに気付く悠悟。

「食べないのか」
それとなく聞いてみる。

うん
「食べる」

自分の分を持ってくる彩織。


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ズズ~ッ

食事が終わり、気持ちを静めるハーブティを飲むふたり。

俺の料理を超えるくらいだ。誰も勝てないよ、と静かに言う悠悟。


「分かってるわ」
ブーたれる彩織。


もう、曾孫もいる年齢。

真織、とは息子の奥さんの名前なのだが。
いつまでもいつまでも。子供っぽい彩織である。。


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桃花 真織(おうか まおり)。

悠悟と彩織の息子、「悠」の奥さんである。


こういう事情でカルフォルニア工科大学に入学することになった悠。


いきつけのBarで、ホールスタッフとしてたまに見掛ける日本人の女の子が気になるようになった。
どうやらハイスクールに通いながらバイトをしているらしい。

絵に描いたような清純な女の子で、何となく目がいっていた。
(何となく、である)


ドビュッシーの「月の光」が流れてきたことがあった。

そのBarはピアノ・歌・舞踊、と色々な雰囲気空間の彩りがあるお店である。

その、ピアノの奏者が来れなくなったのか、代わりに彼女が弾いているようだった。

技巧的には稚拙だが、

母さんに似ている・・・

(母さん=彩織)


悠は彩織の「月の光」を思い出した。


或る時は歌手の人間が休んでいたのか、
やはり彼女が代わりに歌を歌っている時があった。


桃色の可愛らしい衣装で、とてもキュートだった。

ずっと
声を聴いていた悠。


(・・・汗)


・・・

Her special talent is seducing us!!
(何という誘惑ぶりだ!)

周りの騒がしい声。


髪をまとめ、真紅のドレスで舞踊を踊った彼女。
その時は驚いてよろめきそうになった悠・・・。


踊った後、

Here is a black dress.
So, please sing "The Magic Flute" with these clothes.
(ここに黒いドレスがある。
これで『魔笛』を歌ってくれないか)

黒いセクシーなドレスを差し出してリクエストする客がでた。
どこから用意した服なのだろうか・・・。



驚く悠。

楽屋から出てきた彼女は厚化粧、髪はそのままおろし、
ただでさえ開いていた胸元が破かれて更に肌が露出していた。

どー考えても際どすぎるぐらいの深いスリット。
ハサミで切ったのだろう・・・


迫力のある色っぽい声。

周りは真っ青(真っ赤→真っ青)


ガタッ!!

部屋中に響き渡るように席を立ち、バチッとお札をテーブルに置いて
サッサッ とBarを出ていく悠。


周りは一瞥したが、それよりも彼女の方に夢中であまり騒ぎにならなかった。



何てふしだらな女なんだ!
あんな格好をして
・・・的なことを考えていた。


「(違う)」

本当は彼女の肌を誰かに見られたのが悔しかったのだ。


プックスクスクスクス
プリリリリ~

クスクスクス

ヒィチャンドリが鳴いている。

アメリカでしか生息しない鳥である。

・・・

「(ん?母さん?・・・似ている・・・)」

何故か似ている。
たまたま同じ感じの鳥が来たのだろうか。

プリリリリ


「(ヒィチャン、俺どうすれば・・・)」

レゴの人間型の女の子(清純系)がパタパタ歩き回ってるくらいにしか思わなかった。

「(もしかしてあの少女が好きなんだろうか・・・)」


ピルルルルルル

「優柔不断鳥」の異名を持つヒィチャンドリ。

優柔不断に色々な鳴き声を出す。


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・・・

何故か。

ヒィチャンドリがキューピッド役になってふたりは仲良くなった。


・ヒィチャンドリを飼い始め、鳴き声を真似するようになった悠
・Barで何となく口ずさんでしまった。(ドビュッシー系



・ドビュッシーお好きなんですか?
・ヒィチャンドリを飼ってらっしゃるのですか?、とふたつ質問され



・ドビュッシーが好き、ヒィチャンドリを飼っているという共通点で
・仲良しに


いつもは本当に天使のように清純な彼女。

歌を歌っている時は可愛らしくてキュートだった。

赤い服を着て踊っている時は妖艶で、

黒い服を着ていた時は・・・



Thou shalt look like the saint in the morning.
(朝は聖女のように)

Thou shalt look like the lady in the daytime.
(昼は淑女のように)

Thou shalt look like the whore at night.
(夜は娼婦のように)

Thou shalt look like Slut Midnight.
(真夜中は痴女のように)


ティファクリン・レヴィの『ア・レディ』


四季 悠(しき ゆう)17歳
桃花 真織(おうか まおり)15歳


運命の出会いだった。

ヒィチャンドリ「ピルピルピルプルル~」


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彩織「妖艶の赤と、清純の白?

桃の花。「桃花(おうか)」。

悠もい~子見つけたもんねぇ。

料理うっまいし (むすっ)」


俺は
「『お餅を乗せた生鮭のチーズ焼き』とかの方が好きだよ」
無表情で言う悠悟。


「同情しないで! ・・・ってもう!あたしったらいつまで子供なのよ!」

ブンブンッ、と頭を振った外には


フリフリフリフリー
パサパサパサ

ンンー!

何故かアメリカでしか生息しないヒイチャンドリが鳴いていた。

 

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