7. ゆうじょう

 

 

  洋子「そういえばテレビでやってた。小さい子って前世の記憶とか、

お母さんのお腹にいる頃の記憶とか お、覚えているん、だってね」ニコッと遠慮深く笑う。


5歳以前の安曇(あづみ)の記憶は、生まれてくる前の世界の記憶だったようだ。

「そんな前のことを覚えているなんて」
安曇は疑問に思っている様子。


只野安曇(ただのあづみ)。
人が猿や猿人、原人などに見えてしまう不思議な能力を持つ。
稀(まれ)に普通の人間、を発見することもある。

そして、

「典型的な存在感のない男子高生」である。


彼のクラスメート。
椛山洋子(かばやまようこ)。
特に不思議な力はない。が。

「典型的な存在感・影響力のある女子高生」である。


ふたりは生まれる前に優等種「男性」として生まれてくる予定だったのだが、

何故か洋子は「女性」として生まれた。


今日、
ふたりは、豪邸・只野の屋敷で話していた。

(ふたりでいると学校の場合大スクープに(過去参照)になるから)


前回の、ふたりの生まれる前の記憶。

思い出した事象を、安曇は洋子に話したのだ。


「き、記憶って悪いものだって・・・持っちゃうもの、でしょ。
悪い記憶力、、も押し付け・・・ちゃったのかも、、」

だから5歳以前の記憶を持ってるとか


いや

安曇が言う。

「悪い記憶じゃないよ。君と俺との大切な記憶だ」


ホッとする洋子。


「人が、、原人とか猿人に見えるのって、今の人類が劣化している証拠、、なのかもね。
・・・だからそれを分からせるために、「わたしたち」にその能力を神様が」

「それでか・・・」安曇がつぶやく。


お、「お、押し付け、、おお、お、おお、押し付けちゃった、、のかな・・・」

わ、わた私がその力を半分、、背負っていれば、、あ、安曇君こ、こんな極端に見えることなかったの、かも・・・

心臓がドキドキする。


・・・


「過ぎたことはしょうがない」
安曇が言う。


ご、ごめん、、ね。あの、、あ、あ、、、あ、そうだ。

わた、、私がこんな、、恐縮してるのって、、

「子分でいい」って生まれる前に言ったから・・・なんだね。きっと。多分、、


くるっと振り返って洋子を見る安曇。


「まぶしかった。君はいつでも俺の絶対紳で。常に俺の上から手を差し出して俺を救おうとしていた」



「そそそそそ、そっそそそんな、ああああたしな、あ、あの、誰かと勘違いし・・・」

目を回して両手をふらふらさせる洋子。

「ようこ、、「太陽」の「陽」で「ようこ」ともとれる
俺の中では」

・・・

ふわっと洋子を抱き締める。

「(あれ?いつの間に?)」

存在感の無いせいか、警戒される前にスッと抱き締めてしまえる安曇。


「お互い、こうしてたんだよ」

・・・

洋子「お、え?・・・あ、、あ、、、あっ!思い出した・・・ 私たちは無敵だから一緒になれば強くなれる、って」

ハッ

「あ、あの。アルファが私でベータ、が安曇君。アルファ、ベータ、、1番と2番だから、2番目のベータ、、安曇君だって、、あ、あれ?真人間てことじゃないの?

私、、は女だから、女より上の「男」はそれ以上に、、なるんじゃ・・・?」


・・・

「(有り得るな。淘汰されるべきは俺か・・・)」
安曇は思う。


・・・

黒い沼に沈むような感覚が襲う。

黒い液体に飲み込まれるような感覚。

渦に、、黒い渦に巻き込まれるような、、


恐い

嫌だ!

・・・?

この黒い割れるような感情はなんだ。


「恐怖」?

黒い・・・

恐い・・・


・・・



もし

「君さえいたら、何もかも、、良くなる気がする」
安曇は言った。

「太陽にだって勝てるんだろ。地球が爆発しても生き残るんだろ

君はそれだけの存在なんだ。

俺の手を離さないでくれ。お願いだ」


ぎゅうぅぅうぅっ


うぐっ 胸が潰れる!

どうでもいいことを考える洋子。


同時に、涙があふれそうだった。

私が守ってあげなきゃ。私がいなきゃこの人可愛いから(←?)変なことされちゃう・・・

守らなきゃ!常に傍にいなきゃ!

ど、どうすればいいんだろう。

結婚すれば?でも物理的にずっと一緒にいられないし、、

同じ会社にすればいいかな?(すっごい高速で色々考えている)


ず、ずずずずず、ず、ずっとい、一緒に、、い、いよう?

「安曇君、私がいるから。ず、ずっと、、私が傍に・・・いるから・・・」

やっと言う洋子。

・・・

「離れたらヤだからな」安曇らしからぬ発言をする安曇。

「あ、あの、、、ま、ま、真人間同士は、、淘汰されるから、、私たちはいずれ・・・」
洋子が不安なことを言う。


例え淘汰されても、君の存在は偉大だから、ずっと後々まで、、ずっと残る。

それでいい。
「俺は忘れられても」


私たちは繋がって、、いるのよ。私が、、後々まで残れば、あなただって残る・・・

「わたしたちは・・・ふたりでひとつ、、なのよ」


それは男女愛ではなく、

れっきとした・・・戦友、、洋子の方が格が上だが・・・男同士の友情の言葉であった。

 

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