3. ふぁみれす

 

 

  只野安曇(ただのあづみ)=存在感がない男子。いてもいなくても誰も気付かない。

椛山洋子(かばやまようこ)=存在感がありすぎる人種。一挙手一投足を注目される。

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授業中、こっそり渡された紙に書かれてあったのは
『帰宅後、○○(ファミレス)。屋上目立つ』

であった。


要訳すると、
「屋上で一緒に昼食を取るのは目立つ。だからお互いが帰宅後に、○○で落ち合おう。そこでならゆっくり出来るだろう」

ということであろう。


先程挙げた、対極!なふたりが席が隣になり、

安曇が「真人間だ」と洋子を言ったことから話は始まった。


人間が、猿や、猿人や、原人、旧人、、に見える能力を持つ安曇。

ごく稀(まれ)に普通の人間を発見する。

彼はその人間を「真人間」と呼称していた。


洋子は「真人間」であった。



キャッキャッ パパー あれかってー!

駄目だよ、これから食べるんだろ。

そうよう、お腹いっぱいになっちゃうわよぅ?


がやがやがやがや


ファミリーレストランの懐かしい雰囲気。空気。


ホットケーキを注文した洋子と、シーザーサラダを注文した安曇。

ドリンクバー持って来たコーヒーをズズッと飲むふたり。


「あはは、大袈裟になっちゃったよね。わざわざこういうところまで、、来て・・・」
頭をかく洋子。

「君は目立つからな。僕が注目を受けるのはいいけど、全部君が引き受けるのかと思うと」

ズズーッ


少し青くなる。

「な、何でだろう。昔からなの。何もしてないのに、話もしてないのに・・・

何年も前の人に覚えられていたり、、
何でそんなこと知ってるの?っていうようなことを知られていたり、、
ずーっと前のことを覚えられていたり、、」


きっ 気持ち悪いのよっ

小さな声で言うように努力をする洋子。

「私目立たないようにしてるのに、、こういうことばっかり、、
誰かに言えば絶対『自意識過剰』とか言われるの分かりきってるから誰にも・・・」


「答えは簡単。君が真人間だから」

あっさりと安曇は答える。


「『低』は『高』へと憧れを示すものだからね。
遺伝子的、、本能的に」

目を瞑り、テーブルの上で両手を重ねている。


真、、人間。


あっ


そうだ。

「あ、安曇・・・君でいいんだよね? あ、安曇君・・・は、、その

真人間、、で思い出した、、けど 真人間以上・・・じゃないのかな」


洋子は、

『同レベルの人間に対しては人間は鈍くなる。

逆に 下や上のレベルだと、鋭くなってしまう・・・』

自分が安曇に必要以上に緊張しているのは「上のレベルの人間だから」なのでは?と
語った。


「お、お釈迦様も言ってるわ。人間の辿り着く最後の地点は「無の境地」だって。

何もない状態なのよ

そそそそ、そそそういう状態、、なんじゃないかな」


「それは分からないな」

少し驚いた表情の後に安曇は言った。


Q. 雑多な問い
芸能人の誰々はどう見えるかとか
真人間はどのくらいの確率でいるかとか

猿とかそういう人は人間から遠い分、ピュアなのか?とか
真人間でも最低な人間はいるのかとか


A. 最適化した解答
猿人・原人・旧人でも素晴らしい人間はいる。
新人(真人間)でも最悪な人間はいる。
能力、知性、精神性、人間性の総合力が外見に出るらしい


そんな話をして。



ファミリーレストランを出て、それじゃまたね、と別れる時に

安曇が言った。

「洋子」


う?(呼び捨て!)

振り返る。

「は、はい」


「また、お昼に屋上で。待ってるよ」


う、うん、と言おうとして

「ちょっと待って!!」

と叫んだ。


「みみみんなに変に風に見られちゃう・・・

ど、どこ行けばいいんだろうね?」

と洋子。


一度もう「椛山洋子はあやしい。男と最近一緒にいる」

という烙印が押されてしまったのだ。

(頼むから「椛山洋子は最近、只野安曇と一緒にいる」にしろと~~)


参ったな

心底「参ったな」という顔をしながら安曇は腕を組んだ。


「じゃあ、俺ん家おいでよ。家に帰る時」


洋子「え?親に何か・・・言われない?」


安曇「使用人が4人ほど。両親は海外にいるから大丈夫」

使用人たちは君がいる時は追い出す、、まぁ君は目立つからどうなるか分からないけど・・・


洋子「ホッ・・・ わ、分かった! っていうかあれじゃない!・・・ちょ、ちょっと待って!
私たち高校生でしょ?風紀的に、、いけなくない?」

安曇「少なくとも、君からはそういう邪とか悪の空気は感じられなかった

だから大丈夫だろう」


わ、わたし、じゃなくて

「あ、あ、安曇君が!」

「俺は大丈夫。何の感情も欲もない」


・・・

洋子「そ、そう・・・」


簡単な別れの挨拶の後。


安曇は遠ざかっていった。



雲がたなびいている。

ふわー・・・


少し冷たい風。



安曇君は存在感ない。

けど

私だけはちゃんと彼を捉えていられる存在でありたい。


空をそっと見た。

薄い雲がぽちぽちある。


時間が経てば移動して、そのまま消えてしまう雲。

でも 安曇君 ずっと消えないよ。私の中の空では。あなたという雲は・・・


そうして 家に帰って行く洋子だった。

 



 

 

 

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