首席=状元(じょうげん)
次席=榜眼(ぼうがん)
三位=探花(たんか)
50歳でやっと受かるのは若いうち、という言葉があるくらい受かるのが極めて難しい、
世界で一番難しい役人登用試験、科挙(かきょ)。
昔の中国の試験、、である。
そこで、首席で合格した人のことを状元、
次席を榜眼、三位を探花と呼ぶ。
高校二年生。
外見、地味。
髪型、ロングヘアー。
身長、158cm。
得意なもの:無し
苦手なもの:無し
ごく平凡な、「何もかも偏差値50」の女の子、椛山洋子(かばやまようこ)。
美人でもなければ不美人でもない。
頭良くなければ頭が悪いという訳でもない。
スポーツは得意ではないが、特に苦手という訳でもない。
何か特技を持っているわけではないが、適当に何もかも平凡には こなせる。
真面目でしっかりしているが、抜けているところもある。
典型的な「49でも51でもない、『偏差値50』女子」である。
一番目立たないタイプと言えよう。
特別凄かったら「凄い!」と尊敬されるか妬まれる。
特別劣っていたら莫迦にされたり憐れまれたりする。
偏差値50が一番目立たない。
のにも関わらず。
椛山洋子は異常に存在感があった。
一度しか会ったことがない(話したこともない)人間も、「あんな人がいた!」と何年も覚えているのだ。
名前を見た人間はおそらく一生忘れないだろう。
(信じられない)
しかしそれは決して「良いから」とか「素敵だから」とか
そういう、、類のものではない。
何となく。なのだ。
何となく、彼女は人目を惹き付けた。
悪い意味でもなく、かと言って良い意味でもない。
完全に、只野安曇(ただのあづみ)の逆と言えよう。
只野安曇は、逆に何もかも『偏差値85』くらい行ってるにも関わらず、
誰も彼を忘れたし、
興味も持たないし、
会っても名前を見ても覚えない。
「あんな人いたっけ?」
と誰もが思う。
只野安曇と椛山洋子は隣の席になった同じクラスの同級生同士である。
安曇は人間を猿だとか猿人だとか原人だとか、マシな人間は旧人(ネアンデルタール人)に見えてしまうという変な、、不思議な能力があった。
が、たまに普通の人間を発見することもある。
久し振りに見た「真人間」が椛山洋子だった。
ふたりは何か見えない力で結び付けられ、
そして実は生まれる前に『羊水牧場』と呼ばれる、この世に誕生する前の魂たちが集まるところで
「最優等種」だった(つまり状元だった)洋子が、
「次席」の(つまり榜眼・・・)安曇の「存在感」というものを奪ってしまった、、という記憶を思い出す・・・
に至った。
存在感だけではない。「感情」だとか「欲」だとか。
色んなものを。
奪ってしまった。
与えたものもあったけれど、それは人生の最後で得る「無常感」だとか「冷静さ」だとか「無我」だとか「落ち着き」など、
茶色い色が似合いそうなもの、、ばかりであった。
人を猿人のように見える能力も、ふたりが半分こする予定だった。
のかどうかは分からないが、
半端ない能力を思うと、洋子も持つべきだったその能力をまるまる安曇が背負った、、と見るのが妥当であろう。
他にもそういう能力がある人間がいるとしても1位と2位の能力には敵う訳がない。
安曇はただでさえ強い能力を持つはずだったのが、より強い能力をドシンッ!と押し付けられ、
細部まで細かく人間を色々見ることが出来るようになった、と考えられる。
神様は、たくさんのものを奪われた安曇に良い要素をたくさん与えたのかもしれない。
平凡な洋子は「最優等種」だったから、
きっと洋子の「優秀な部分」を丸ごと抜き取り、それを安曇に植え付けた、、そう考えるのが自然だ。
しかし「最優等種」。丸ごと能力を抜き取られても、「平凡」になれるだけの素質があった、という訳だ。
これはかなり凄いことだと言える。
そして、「平凡」にも関わらず注目を浴びていることが、、何よりの証である。
何かに優れているとかそういうのがあれば注目を浴びるだろう。
逆に劣っていても注目を浴びる。
何の特徴もないのに異常に注目を浴びることこそ、「特別な存在の証」であり、
それこそが1位だという何よりの証明である。
加えて、1位というだけでも注目を浴びるのに、「2位」の安曇の要素、つまり「存在感」を奪ってしまったのだ。
超1位・・・と言えるだろう。
だからこそバランスを整える為に安曇は何もかもが偏差値85になった、、のかもしれない。
なったとしても存在感が(略)。
でも安曇は良かったのだ。
奪われたのではなくて、「あげた」のだ。
羊水牧場で、洋子に。
大好きだったから。
・・・洋子。
君はいつも上から手を差し伸べていたけど
・・・
俺は男なのに
見上げてばかり。
もしも君が「探花」だったら・・・
探花だったら。
(※もっとも、羊水牧場では性別は決まっておりませんが)
(今の気持ちでその時のことを語っている感じ)
いつまでもいつまでも
永遠に勝てない。
でも夢を見る。
君が探花で、僕が一歩上の榜眼なんだ。
遠慮なく君に近づけるだろう。
無かった感情。無かった欲。
空っぽのコップに水を注ぐ洋子がいて、
安曇は 少しずつ少しずつ色んなものが湧き出てくるようになった。
いつか空の上から手を伸ばす君の手を バシッ!と掴もう。
男らしく・・・
安曇は思った。
生徒A「先生!奴ら科挙の話ばっかしてます」
先生「何、椛山君が?」
生徒B「え何かこれさ、随分親しげじゃない?付き合ってンの?」
生徒C「だよね。コレ読んでるとそんな感じじゃない?」 (何読んでるのかと)
生徒D「超ヤバいンですけど」
先生「首席、次席、でいいじゃないか。何故中国にこだわるんだ。
中国好きなのか?椛山君は」
(安曇の話をしろと~)
生徒A「中国好きみたいっすよ!前に聞いたことあるなぁ」
生徒D「ねぇねぇ何がきっかけで付き合ったのかなぁ」
生徒B「椛山さんて結構あれっていうか」
先生「けしからん!後で保護者に連絡しないと・・・
おーい椛山君の、、住所とか電話番号知ってるやついるかー?」
生徒「あー知ってまーす!」(全員)
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